10年の黒

わたしは昔から黒い服しか着ない。これは自分の中の掟のようなもので、例えば誰かに黒以外の服を借りると自分が思う自分の存在感が普通より大きいような気がして、いつもと違う(服の色によって強調された)自分の存在に落ち着きがなくなる。それとクローゼットの中が一色で統一されているのもとても気分が良いので他の色を入れたいと思わないのだ。

黒い服を着るようになったのは約10年前、当時付き合っていた年上の元恋人の影響が最初だったと思う。ちなみに元恋人は黒以外もよく身につけていたのでその人のせいかと思うと微妙なところだけど…。その人は結構ひどい人で関係のあった頃よく泣いたり不安な気持ちになっていた。今もあまり良い思い出はない。もうそんな昔のことなのですっかり恨みや未練はないのだけど、自分が黒い服を着るのはなんだか呪いのようになってしまっている。

でもそれとは反して可愛らしいものやぬいぐるみなどもとても好き。一時期ロリィタを着ていた時期もあった。今でも繊細な刺繍入りのキャミソールやアンティークのフリルワンピースなどを見ると胸が高まる。やっぱり自分の性自認が女とは言い難いからそういうのを身につけてるのが恥ずかしいと思ってしまう。身体の性は女だし着ることに抵抗があるのは少し変かもしれないけど、”可愛い=か弱い”みたいな固定概念があることをしっかり自覚している。